ケイツの様子についてご報告申し上げます
「松の内を過ぎ、寒さが一段と厳しくなってまいりました」と始めたかったのですが、2024年の冬は比較的に暖かい日が続くようです。皆さま、いかがお過ごしでしょうか、もりたさんちのマルチーズです。
気象庁が発表した長期予報によると、2024年1月から3月までの3か月間は全国的に気温が平年より高くなる見込みです。暖冬傾向が続く要因については「地球温暖化に加え、日本上空の偏西風が北に蛇行し、寒気の影響を受けにくくなるため」ということでした。ご周知の通り、地球温暖化の原因は、人間活動による温室効果ガスの増加である可能性が高いとされています。私が子供の頃は、京都市周辺は毎年のように雪が積もりましたが、20年前くらいから雪は積もるどころか、降ることさえ滅多にない状況です「昔はよく雪が降ったなぁ」と思い出しながら過ごしていると、稀ではありますが、今でも寒気が入り込み、凍るような寒さの日にちらほらと雪が降り始めるようなことがあります。そのような時は少しだけ安心します。
地球温暖化は危惧されるものの、当犬舎のマルチーズたちはどこ吹く風。アンダーコートがなく、決して寒さには強いとは言えないシングルコートのマルチーズには過ごしやすいようです。
最近のお問い合わせ状況
先日は、遥々遠方の東北からご予約がございました。当犬舎にとっては大変励みになります。誠にありがとうございます。1日でも早く、最高に可愛らしい、本物のマルチーズをご家族にお迎えいただけるよう、最善の努力を続けてまいります。
最近のもりたさんちのマルチーズ
この後のテーマでも、詳細にご説明を差し上げますが、当犬舎のケイツ(女の子)の様子に変化がありましたので、その対応に少し立て込んでおりました。昨年12月、アンナの交配が成功せず、少し残念な結果に私たちブリーダーも気を落としておりましたが、禍福は糾える縄の如し、今回はケイツにその出番がやってまいりました。
ケイツの様子についてご報告します
昨年12月、交配を専門分野とする動物病院でプロジェステロン検査(黄体ホルモン検査)を行い、正確な排卵日や交配適期が特定できていたにも関わらず、アンナの交配が奇しくも失敗に終わってしまいました。前回そういったことがあったため、今回に関してもりたさんちのマルチーズは、安易に公表せず慎重な態度を取ることを選択しました。
そう、ケイツの様子のことです。
実はケイツは今年に入った1月6日にヒート(人間でいう生理のようなものです)の兆候があり、私たちも昨年のヒートの時期から逆算した結果、そろそろ、そういった時期であると予測を立てておりましたが、無事に予測通り、その時期を迎えました。今回は、前回以上に慎重に正確な交配適期を探るため、約1週間ほどの短期間に、4回に渡って動物病院を受診しました。
ケイツは当初、ブリーダー泣かせの無出血タイプ(ヒート時に出血を伴わない)である可能性があったため、私たちブリーダーはその時期が近づくと、ケイツの身体に変化が起きていないか、毎日、詳細に確認するという業務が日課となっておりました。当犬舎では度重なる無用な交配を避けるため、適切な交配適期を定め、その日をピンポイントに2回~3回の交配を人工的に行います。
すべては親犬たちのために
人口交配にこだわるのは、ブルセラ病(ブルセラ病はその犬舎すべての犬が将来的に淘汰される可能性のある大変恐ろしい病気です)を始めとする病気です。そして何よりもケイツ自身の負担軽減のためです。
自然交配を薦める獣医師もいらっしゃるのですが、当犬舎はあくまでポリシーとして母犬には、負担やリスクの低い科学的なアプローチを進めていきたいと思っています。前回同様に今回も、小型犬のための海外製交配専用バルーンカテーテル、医療用シリンジ、精子の希釈液、膣内や子宮を傷つけないために専用の医療用クリーム(動物病院で使用されていた海外製のクリームを見つけてきました)などを併用した交配を行います。
古い方法しか知らない(勉強しない)ブリーダーやYouTubeで人口交配を行う動画などに散見されますが、100円均一で仕入れたような道具を使ったり、医療用ではない太いシリンジを、直接膣内に挿入しているような痛ましい様子、中にはホームセンターなどで販売されているような、直径が親指大くらいの大きさのビニールホースを利用するなど、信じられない方法で交配を行っている方が存在しています。聞くだけでも母犬の悲鳴が聞こえてきそうですが、本当に止めて欲しいと思います。
当然ですが、当犬舎ではそのような母犬を道具のごとく扱うような、酷く、そして古い交配は行いません。この交配に使用する医療器具は、ちょっとした企業秘密的な部分があるものの、その秘密の大部分は親犬を守るためでもあり、親犬が将来に渡って苦しまないように、細部まで配慮を行っています。この内容はまた別の機会にブログで取り扱いたいと思います。
ケイツのプロジェステロン値の推移
ケイツのプロジェステロン値の推移はこちらになります。
・1月6日
出血の確認(ヒート開始)
・1月8日
プロジェステロン値0.63㎍
・1月11日
プロジェステロン値0.76㎍
・1月14日
プロジェステロン値3.51㎍(LHサージ)
・1月16日
プロジェステロン値7.98㎍(排卵日)
・1月17日~1月19日
交配的期(出血の確認から12日目~14日目)
・2月20日(予定)
受胎確認(エコー検査)
イムノ VS. バイダス
今回のプロジェステロン検査は、やはりバイダスを持っている動物病院にお願いしました。FUJIFILM製の富士ドライケム・イムノを持っている動物病院は数多あるのですが(検索するといくらでも出てきます)やはりバイダスを所有している動物病院は日本国内ではわずかです。少しマニアックな話になりますがプロジェステロン検査に使用する機械は、FUJIFILM製やbioMérieux製などがあります。
ある動物病院にて
約1週間、FUJIFILMのイムノとbioMérieuxのバイダスで、同じ個体で同時に血液検査を行ったところ、イムノの数値結果が、基準値より低かったり高かったりと、安定しませんでした。最終的に交配適期の予測が建てられないケースが発生したため、現時点ではバイダス以外の装置は信頼性に欠ける判断となっています。
しかしバイダスで検査を行ってくれる動物病院までは車で高速道路を使用しても片道2時間かかります。検査のたびに移動だけで往復4時間、検査を含めて6時間以上を費やして動物病院に通うわけにもいかず、2回目以降の検査は近くの動物病院で事情を説明し、採血・遠心分離器にかけてもらい血清を抽出、目的の動物病院にクール宅急便で輸送し、翌日結果を教えてもらうという事を数回繰り返しました。
LHサージ
このプロジェステロン値については、説明を始めると長くなりますので、こちらも別の機会にブログで説明したいのですが、簡単に説明するとLHというのは「Luteinizing Hormone」の略で黄体ホルモンのことを言います。そして、この排卵が起きる前に、LHが下垂体から一過性に大きく放出され、LHの数値が急激に上がります。これを「LHサージ」と呼びます。つまりこのLHサージが起きる時期を探ることで、排卵日を特定します。
受精能獲得
しかし犬の場合、この排卵されたばかりの卵子には精子が受精するために必要な受精能がありません。卵子は排卵から2~3日経過して成熟し、受精能を獲得します。この時点でようやく精子が受精できる準備が整います。そして精子が卵子に受精すると、無事に受胎(妊娠)という流れになります。
交配適期と受胎率
女の子の交配のタイミングは2~3日程度ですので、日数だけでみると、なかなかシビアであるとわかると思います。しかし、男の子側の精子は膣内で10日程度も生存可能と言われているため、実際の犬の受胎率は、非常に高いことが知られています。2回交配で80%、3回交配で90%とも言われています。しかし、これはあくまで男の子の精子や女の子の卵子に問題がなく、交配適期がわかっていることが前提での確率です。
ブリーダーに交配をお願いする場合「女の子の最初の出血から11~13日目くらいに連れてきてください」と伝えられるのは、排卵(排卵は発情期の3日目に起こりますが、出血の開始から発情期に入るまでの期間を「発情前期」と言います)から卵子が熟成して受精能を獲得する日が、統計を取った結果、7割程度がこの期間に収まっているというだけです。しかし、実際には個体差により排卵日は3日から30日と幅があります。比較的多くの犬が当てはまるというだけで、出血の開始からの日数だけでは排卵日は特定できません。こういったことをきちんと検査で見極める事が必要になります。また、初期の出血は量が少ないため「出血初日」を見逃しているケースも多くあります。
犬の発情出血開始から排卵までの日数
結果がわかるのは約1か月後です
約1か月後にかかりつけの動物病院でエコー検査(受胎確認)を行います。前回、アンナがうまく妊娠しなかったこともあり、私たちブリーダーも天に祈るような気持ちです。今は只々祈るのみ、こればかりは、ブリーダーも獣医師も、どうすることもできません。
残念な結果になることも当然想定してはおりますが、無事に妊娠していれば私たちは幸せです。当然ですが、男の子も女の子も、国内屈指の有名ケネル出身の子たち、良血統同士の子なのでとても良い子が産まれることは必至です。少しだけご期待下さい。また近況はご報告差し上げます。
今後の予定
次回以降に、親犬の紹介を母犬編、父犬編と2回に分けてご紹介したいと思っています。この親犬の紹介はいろいろなブリーダーが運営するホームページを確認しても、なかなか取り組んでいない内容(犬舎に赴けば会わせてはくれると思うのですが)だったりします。自分の家族となるマルチーズの子犬の親犬がどんな犬なのだろうかと気になる方は、是非有用な情報となるかと思いますので楽しみにしていてくださいね。
今回はこんなところで
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全世界がマルチーズで繋がりますように。